肥沃な土壌には腐植あり!
森の中で沢山積もった落ち葉をめくったことはありませんか?一番上の落ち葉は葉っぱの形なのに、下にいくほど落ち葉の形がなくなり、さらに下にいくと葉っぱは分解され、真っ黒な有機物となっています。これは、土壌中の動植物の遺体が分解・変化して土を黒くしていくのです。この黒い物質を「腐植」といいます。
肥沃な土壌にはいろんな種類の生き物が数多く住んでおり、腐植に富んでいます。なかでもとくに複雑な組成をもち、分解しにくい有機化合物を「腐植物質」と呼んでいます。
田おこしと呼ばれる作業は、稲の切り株や刈り草などの有機物を土に鋤き込むことで腐植を作り出します。
この水田の地力をあげる腐植の力は大きく5つあります。
腐植の大きな5つのチカラ
【その1:土壌の団粒構造の形成】
腐植は粘土や細かい土の粒子をくっつける糊の役目を果たします。腐食の効果で土壌の団粒構造化が進むと、土壌の中のすき間が多くなり空気や水の通りがよくなります。結果として、水はけがよくて水もちのよい土になります。
【その2:陽イオンの吸着力が高い】
腐植はマイナスの電気を帯びており、陽(プラス)イオン交換容量が高いため、陽イオンをたくさん引きつけてくれます。肥料として土壌に施用される養分のうち窒素、カリウム、カルシウム、マグネシウムは水に溶けてプラスイオンとなり、マイナスに荷電した腐植に吸着されて雨や潅水で流れにくくなります。この土壌が肥料養分を吸着できる力を「保肥力」といい、腐植の多い土壌は肥料の持ちがよいと言われています。
【その3:土壌の緩衝作用】
土壌のpH(酸性度)は土壌養分の効き方に大きく関係しています。土壌中のpHが低すぎ、または高すぎると、養分の効きが悪くなります。腐植により土壌の電気的な緩衝力が増す事で、このpHを安定的に保ち、施した肥料の酸やアルカリ物質によるpHの変動を抑える効果があります。
【その4:リンの有効化】
肥料の3要素の一つであるリン酸は、植物の代謝全般に深く関わる大事な栄養分です。このリン酸は土壌中のアルミニウと結合して稲が根から吸収できない形態に変化してしまう性質を持っています。特に火山灰土の土壌ではそれが顕著にあらわれます。腐植により、土壌中の有機物がこのアルミニウムと結合して不活性化してくれるので、リン酸が稲の生育に効きやすくなります。
【その5:保熱効果】
腐植物質は黒色をしており、太陽の光を吸収しやすいので土壌温度の上昇や保熱に役立ちます。
その他にも、腐食は植物生長ホルモンであるオーキシンやサイトカイニンなどを含んでいるため、稲の生育を促進し根の量が多くなる等といった効果もあります。
田おこしのあと、有機物が腐り、腐植となり、微生物やミミズなどがそれを分解して養分を作り出します。腐植によって肥沃な土壌の水田を保つことで、美味しいお米が出来上がるのです。
先祖代々受け継がれた水田で作られる、その土地のお米。毎年収穫のたびに減る養分を、腐植で土壌がもつ本来のチカラに取り戻し、そしてまた次の年のお米を作り出していきます。
ツナギでご紹介している農家さんも「土づくり」を大切にしていらっしゃいます。自然が持つチカラを最大限に生かすことが、美味しいお米の秘訣なのですね。