田んぼに咲く色とりどりの花が、お米の栄養に?
まだ田植えがされていない田んぼに、レンゲの花が綺麗に咲いているのを見たことはないでしょうか?田んぼや畑に、作物ではなくヒマワリなど綺麗な花を咲かせている風景を見かけた事があるかもしれません。筆者も、4月頃、棚田に広がる菜の花を見に行きました。一面の田んぼが黄色に染まる風景はとても綺麗で美しく、春の訪れを感じました。この花たちは、刈り取られず、そのまま土壌にすき込まれます。
これは、「緑肥」と呼ばれ、作物に養分を供給するために栽培されている花なのです。花たちはすき込まれたあとに、土壌中で腐熟し、肥料になっていきます。緑肥には、レンゲ、クローバー、クロタラリア、ハリーベッチなどのマメ科植物のほか、菜の花、ソルゴー、エンバク、ライ麦、ヒマワリなどがよく利用されています。
農家の困った問題、センチュウ害を抑える
緑肥の効果には、土壌構造を良くし水はけや保水力を高めるなど様々あります。特に病害虫であるセンチュウの被害を抑える効果については、土壌消毒に代わる対策として緑肥が注目されています。センチュウ対抗作物の効果として、緑肥栽培の報告が多数挙げられており、今後の研究開発に期待が寄せられています。
再び見直されている緑肥栽培
化学肥料が流通する以前は、窒素肥料になるものは貴重であり、1940年頃まではレンゲなどマメ科の緑肥作物が盛んに栽培されていました。近年、稲作においても有機栽培農業や施肥コスト低減を目的に、緑肥の利用が再び見直されています。
実際に、ツナギの契約農家の浪江農園さんもレンゲを用いた緑肥栽培を行っています。秋に稲刈りが終わるとトラクターで土壌を耕し、レンゲの種を播きます。れんげ草の根の部分には丸い粒が確認できます。これは「根粒菌」と呼ばれるもので、窒素成分を蓄えて土壌を豊かにし、良食味のコシヒカリを育ててくれます。
稲刈りが終わった秋の田んぼに種が撒かれた緑肥植物たちは、春になると綺麗な花を咲かせ、田園風景に彩りをもたらし人々を楽しませてくれます。日本の原風景ともいえるこの美しさを放つ植物たちには、美味しいお米を作り出すチカラが宿っているのです。