美味しいお米を育むための土壌の団粒構造とは
「美味しいお米を育てるには、土づくりが大切」とよく言いますが、今回はこの土づくりに大事な団粒構造について説明させて頂きます。
丈夫な稲を作る為には、土壌にしっかりとした良い根を張ることが大切です。そのために、水分が適度に保持されるとともに適度に排水される土壌が必要です。また稲の根に肥料成分をたっぷり吸収させることも稲の栽培には欠かせない条件です。
これらの条件を満たす土壌の構造が、「団粒構造」と呼ばれるものです。
団粒構造は、水のたまり場や、空気の通り道、バクテリアの住まいとなる小さな穴を多数もっており、乾燥や過湿など外部の変化から守られています。そのため、丈夫で美味しいお米を作るには、土壌に団粒構造を持たせることが大事なポイントになります。団粒構造がしっかりしている土壌は、ふかふかしていて排水、保水、通気性、保肥力が優れています。雨が少ない時には急激にしおれること無く、また大雨の時には過湿の害が出にくく、稲はじっくりと耐えることができます。
土・水・空気のバランスが美味しいお米を作る
土壌は、長い自然の営みの中で生まれた岩石の風化物と動植物の遺骸物から出来ており、それらを「固相」といいます。土の中ではこの固相のすき間に、水と空気を含んでおり、水の部分を「液相」、空気部分を「気相」と呼び、これを「土壌の三相構造」と呼んでいます。この三相のバランスの良し悪しが稲の生育に大きな影響を与えています。液相、気相を合わせた割合は、孔隙率(こうげきりつ)と呼ばれています。稲の栽培には、適度な孔隙が必要であり、そのために団粒構造を発達させなければいけません。
団粒構造の土は、団粒間に大きな孔隙ができ、団粒内部に小さめの孔隙ができています。大きめの孔隙は排水や通気に、小さめの孔隙は水や養分を保つのに都合がよいのです。
団粒構造をつくるためには
土の中に団粒構造を作る為の作業を田おこしと言います。
田おこしは、収穫後や稲を植える前の乾いた田んぼの土を15センチほど掘り返し、眠っていた土に空気を入れ、稲の生育を助ける微生物の活動を活発にさせる事が目的です。その際に肥料を混ぜたり、稲の切り株や刈り草、れんげ草などの有機物を鋤き込むと、腐植(微生物が有機物を分解すると黒色の有機化合物に変化して土を黒くしていく、この黒い物質のこと)が多い土になります。この腐植により、粘土と砂が適度に混ざり、腐植が糊の役割を果たし結合された団粒は、水はけがよく、保水力が優れています。
またミミズの多い土壌は健康な土だと言われますが、ミミズは植物の破片と土を一緒に体内に取り込み、そのフンは有機物と土の混合物となり、優秀な団粒構造をもって出てきます。ミネラルなどの無機物・有機物が入った複雑な団粒構造が土壌の中でミミズにより作られます。そのため、英語では「アースワーム」、つまり「地球の虫」という壮大な名前で大事されているのです。