生き物マーク米とは?
お米作りと自然環境は切り離せない関係です。豊かな自然環境があり、その恵みを受けてお米が実り、美味しいご飯をいただくことができます。これは稲作に限らず、農林水産業全てにおいて言えますね。
豊かな自然環境のもとでは、様々な生きものたちが生息しています。私たち人間も含め、生きもの同士が互いに関わりあいながら暮らしています。米作りを通じて地域に住む生きものが暮らせる豊かな環境を取り戻す取組みをPRしたお米を「生き物マーク米」といいます。
例えば、宮城県大崎市の渡り鳥のガンの越冬地として配慮された米作りを行なう「ふゆみずたんぼ米」や、兵庫県豊岡市のコウノトリと共生した米作りを行なう「コウノトリを育むお米」など、全国各地でこの活動は取り組まれています。保全対象は、めだかなどの魚、ゲンゴロウなどの昆虫、サギソウなどの植物、コウノトリやガンなどの鳥類にも広がります。
地域のいきものを守り、お米を作る
「ふゆみずたんぼ米」を作る宮城県大崎市では、渡り鳥のガン(マガン、ヒシクイなど)を保全対象にし、その数が減少するのを防ぎ、越冬地として過ごしやすい環境を作り出しています。ガンのねぐらになっている沼地の周辺水田では冬も水を張る「冬季湛水」を実施し、ねぐらを拡大させています。この冬季湛水により、水田のイトミミズが柔らかな表面土壌を作り出し、雑草の発芽を抑える除草剤を使用しない環境に優しい農法の成功にも役立っています。
また、「コウノトリを育むお米」を作る兵庫県豊岡市では、コウノトリが餌とする水田の生きものを育むために、農薬をできるだけ使用しない稲作技術を普及させ、トンボやカエル等の繁殖を促すために中干し(田植え後に水を抜いて田んぼを乾かす作業)の実施時期を遅らせ、水田で産卵するフナやナマズが水路から遡れるための魚道を設置するなどの取り組みを行っています。
各地域で保全する対象が、一種類の鳥だとしても、実際には鳥の餌となる魚類や昆虫類なども保全する必要があり、結果的にその地域の生物多様性を守ることにつながっています。
生き物マーク米の現状
地域の生きものたちを守り、その活動を共感・支持してくれる人々を見つけ出し、お米を届け、地域の想いを伝えることも、生き物マーク米の大切な取り組みです。スーパーの店頭でビデオを流したり、消費者を招いてイベントを開催し生産地の環境を守る活動に参加できる喜びを体感してもらったりと、さまざまな活動を通し、生き物マーク米のブランドの想いを広げているのです。
しかし生き物マーク米の販売価格は、同じ産地の慣行栽培米よりも高いものがある一方で、全く価格差のないものもあります。環境を守るために栽培に手間のかかる生き物マーク米。その価値を消費者に知ってもらい、ブランドとしての価値を上げることが重要です。生きものを守ることで、減農薬・減化学肥料などの栽培方法を確立でき、さらに食味が向上していくことを、美味しくて安全なご飯を食べたい消費者として期待したいです。
生産者と消費者双方が、生物多様性を守っていくという意識を共感し、各地のプロジェクトが持続されていくと嬉しいですね