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お米コラム・お米レシピ

参鶏湯で暑気払い。もち米を使う理由に、簡単サムゲタンレシピ

             

あつあつのスープで身体が温まる参鶏湯(サムゲタン)、実は韓国では夏の定番メニューということをご存知でしょうか。
夏バテで食欲が落ち、不調が生じやすい夏にこそ、おすすめしたい参鶏湯。
韓国ブームで日本でも人気の参鶏湯について、詳しくご紹介します♪

サムゲダンのイメージ

参鶏湯とは

参鶏湯(サムゲタン、サンゲタン)は、韓国料理の定番で、日本でも人気がありますよね。
参(サム)は高麗人参、鶏(ゲ)は鶏肉、湯(タン)はスープといった意味です。

丸鶏(ひな鶏)のお腹に、もち米や高麗人参、栗、なつめなどの薬膳食材を詰めて煮込んだスープです。

高麗人参は、朝鮮人参やオタネニンジンとも呼ばれますが、古くから滋養強壮によいことが知られています。
韓国の食材で、初めてシルクロードを通って海外へ輸出されたもののひとつといわれています。

韓国のなかでも、特に中腹部にある「忠清道(チュンチョンド)」地域には高麗人参発祥の地があり、参鶏湯が有名です。

日本では、温かい鍋料理やスープは寒い冬の時期に食べることが多いですが、韓国では夏に参鶏湯を食べて暑気払いするのが定番です。

参考文献:ルナ・キョン 「知っておきたい!韓国ごはんの常識 イラストで見るマナー、文化、レシピ、ちょっといい話まで」 株式会社リベル 2022年3月
 

韓国版「土用の丑の日」、“三伏”ってなに?

韓国では、参鶏湯は“三伏(サムポッ)”のときに食べられる行事食の定番です。

韓国にも、日本と同じように暦に合わせて季節ごとの節目に食べられる行事食があります。
その季節の行事食のことを、韓国では“節食(チョルシッ)”といいます。

韓国では7~8月頃、1年のなかでも特に暑い時期に3つの節目があり、
・初伏(チョポッ)
・中伏(チュンポッ)
・末伏(マルポッ)
の3つをまとめて“三伏(サムポッ)”と呼びます。

夏バテの予防のために、三伏には肉のスープなどの三伏節食を食べるのが伝統です。

暑い時期に、あえて熱いものを食べるのには、温かいものを摂って身体を温め、新陳代謝を促して夏の不調を追い払おうといった理由があります。
暑いと、つい冷たいものばかり食べてしまいがちですが、胃腸を冷やすことで消化機能低下につながり、より夏バテしやすくなるといった悪循環にもなりかねません。

韓国料理には薬膳の考え方が取り入れられていますが、参鶏湯に使われている素材は、「気虚」(=気が不足し、免疫力が低下したり身体が冷えたりして体調を崩しやすい状態)に効くものばかりです。
栄養豊富で消化もしやすい薬膳スープが選ばれるのは理にかなっていますね。

2024年の三伏は、
・初伏…7月15日月曜日
・中伏…7月25日木曜日
・末伏…8月14日水曜日
です。

今年の三伏の日には、参鶏湯を食べて暑気払いしてみませんか?後の項で、簡単なレシピもご紹介しています♪

参考文献:趙 善玉「いちばんやさしい 韓国料理」共同印刷株式会社 2013年8月
 

薬膳のイメージ

“薬食同源”の食文化

伝統的な韓国料理の根底には、“薬食同源”の考え方があります。
薬食同源と似たような言葉に、“医食同源”がありますが、これは薬食同源から派生して日本で生まれた造語だそうです。日本では医食同源のほうが聞きなれているかもしれません。

薬食同源とは、食べ物は薬にもなる、という考え方でもありますが、
病気になってから薬を飲んで治すのではなく、普段の食事から身体によいものを食べることで病気を予防したり、不調を感じたらまずは食ベ物のもつ力で、快復を助けるというものでもあります。

どんな食べ物がどんな症状に良いかという先人の知恵が、脈々と受け継がれてきた結果、現在に至る食文化が形成されているのですね。

韓国では調味料や香辛料、薬味野菜を総称して、「薬念(ヤンニョム)」といいますが、ここにも薬になるように念ずるという意味が込められています。

 

薬膳の考え方

韓国料理と関係の深い薬膳の考え方では、健康のためには「気・血・水」のバランスが大切だとされています。
気・血・水の3つをそれぞれ、不足している状態(=虚)、流れが滞っている状態(=滞)に分け、体質や体の状態を表しています。

≪気虚≫

気(エネルギー)が不足し、元気が出ない、やる気が出ない、だるい、風邪をひきやすい、集中力がない、など

≪気滞≫

気(エネルギー)の巡りが悪い。自律神経のバランスが崩れて、イライラしやすい、不安感がある、気持ちの落ち込み、不眠、頭痛など。

≪血虚≫

血が不足し、貧血、めまい、立ちくらみなどが起こる。顔色は青白く、目がかすむ、肌や髪がかさつく、爪が白く割れやすくなるなど。

≪瘀血(血滞)≫

血の流れが悪く、冷えやすい。栄養が全身に巡らず、老廃物も溜まりやすい。シミ、ニキビ、クマなどの肌トラブル、月経トラブル、子宮内膜症などの原因に。

≪津虚(水虚)≫

水分が不足している状態。肌の乾燥、口の渇き、ドライアイ、関節痛など。粘膜が乾きやすいので、感染症にかかりやすくなる。

≪水滞≫

水の巡りが悪い状態。むくみや耳鳴り、めまい、下痢などの原因にも。砂糖や、油っこいものの摂りすぎも水滞を招く。

また、食材の性質を「五性」(=寒性、涼性、平性、温性、熱性)に分け、その働きによってうまく使うことをしています。
参鶏湯でいうと、≪気虚≫に効果的な気を補う食材・おだやかに身体を温める「温性」の食材を中心に使われていることがわかります。

参考文献:薬日本堂「はじめての漢方ライフ 薬膳レシピ&食材べんり帳」株式会社主婦の友社 2018年10月
 

参鶏湯に主に使われている具材の働き

メイン食材はもちろん鶏肉!ですが、参鶏湯に使われている食材にはいろいろな効果があります。
漢方の観点から、どの体質や身体の状態に合う食材なのかや、食材の働きを示す五性も一緒にご紹介します。

・鶏肉 ≪気虚・水滞≫【温性】

…たんぱく質が豊富。肉類のなかでも柔らかくて消化しやすく、胃腸の負担になりにくい。身体を温めて気を補ってくれるので、食欲が低下する時期や疲れやすいと感じるときに。コラーゲンが豊富で、肌や髪を健やかに保つ。

・もち米≪気虚≫【温性】

…気を補い、食欲低下や慢性的な疲労感・だるさを和らげる。穀類のなかでも、特に温め効果が高い。冷えからくる消化不良や下痢を改善し、胃腸の働きを活性化する。エネルギー源。

・高麗人参≪気虚≫【温性】

…不老長寿の薬とも呼ばれるほど、滋養強壮に重宝されている。薬効成分サポニン(ギンセノシド)が豊富。心身の疲労回復に。

・ナツメ≪気虚・血虚≫【平性】

…カリウムや鉄分などのミネラルが豊富。胃腸の調子を整え、心身の疲れを癒す。干すことで甘味と香りが増す。干したナツメは、大棗(タイソウ)と呼ばれ、漢方薬にもよく用いられている。

・栗≪気虚・瘀血≫【温性】

…脾臓と腎臓の働きを助ける。足腰のだるさ、耳鳴りや難聴などにも良い。

・ニンニク≪気滞・瘀血≫【温性】

…気と血の巡りを良くして、身体を温める。元気の源、スタミナ食材としても名高い。抗菌、解毒作用もあるとされ、風邪の予防や初期症状の改善にも。ニンニクの匂いのもとでもあるアリシンは、ビタミンB1の働きを助けてエネルギー代謝を高める。

・生姜≪気滞・瘀血≫【温性】

…新陳代謝を高め、身体を温める。抗菌、解毒作用もあるため、風邪の初期症状に効く。発汗、利尿効果があり、むくみやすい人にも。

・ねぎ≪気滞・瘀血≫【温性】

…気と血の巡りを良くして、身体を温める。風邪や下痢のときにも有効。

参考文献:薬日本堂「毎日役立つ からだにやさしい 薬膳・漢方の食材帳」実業之日本社 2010年9月武 鈴子「決定版 和の薬膳食材手帖」一般社団法人 家の光協会 2019年1月
 

参鶏湯にはなぜもち米を使うの?

もち米のイメージ

参鶏湯では、丸鶏のお腹にもち米を詰めます。なぜ、うるち米ではなく、もち米なのでしょうか?

韓国料理とも関係する薬膳の観点からいうと、
・もち米…温性の食材(身体を温める食材)
・うるち米…平性の食材(温めるでも冷やすでもない食材)
に分類されます。

参鶏湯には、身体を温めて代謝を促すという狙いもあることから、もち米がうるち米よりも適しているのかもしれません。

また、化学的な面からも考察してみます。
お米に含まれるデンプンは2種類あるのですが、
・もち米…アミロース0%、アミロペクチン100%
・うるち米…アミロース約20%、アミロペクチン約80%
と、もち米はアミロペクチンのみで構成されています。

アミロペクチンが多いほど、水分を含んで膨張しやすく、パサつきを抑えて、粘り気が出やすくなります。また、お米の吸水率も、うるち米よりももち米のほうが高いです。
スープに程よいとろみがつくことで、保温性が増し、胃腸や身体を温める効果が期待できます。

また、ブドウ糖が長いらせん状に繋がった構造のアミロースよりも、枝分かれした構造のアミロペクチンのほうが消化酵素が働きやすく、糖に分解されやすいため、甘みを感じやすいといった特徴もあります。

参鶏湯にもち米を使うことにより、スープにほどよいとろみと甘味を加えてくれることから、参鶏湯にはうるち米ではなく、もち米が使われるのではないかと思います。

もち米を味わう簡単サムゲタンの作り方

参鶏湯を本格的に作ろうとすると、丸鶏、高麗人参など手に入りにくい食材もありますよね。

今回は、丸鶏ではなく、手に入りやすく扱いやすい骨付きもも肉を使って。
鶏手羽元や手羽先を使って作るレシピも多いですが、肉質が柔らかく食べ応えがある骨付きもも肉もおすすめです。

栗は、下処理不要のむき栗を使います。

材料さえ揃えば、難しい作業は一切なし!鍋に入れてコトコト煮れば、滋味深いおいしいスープの完成です。
ツナギ流の参鶏湯は、もち米を多めに加え、お粥のようにいただけますので、1品で満足感もたっぷり。
三伏の日だけでなく、この夏の定番にしてみてくださいね。

参鶏湯の材料

【もち米を味わう簡単サムゲタン】

調理時間:約60分

材料(約4人分)

もち米
100g
骨付き鶏もも肉
2本(約600g)
塩(鶏肉用)
小さじ1
にんにく
2片
生姜
1片
長ネギの青い部分
1本分
ナツメ(干しナツメ)
4個
むき甘栗
8個
50ml
1000ml

【コミョン※トッピング】

糸唐辛子、ネギの小口切り
お好みで

【別添え用】

塩、こしょう
各適量

作り方

❶ もち米は洗って水に20~30分浸け、ザルにあげて水気をきる。

もち米を浸水

❷ 骨付き鶏もも肉は、関節の間(軟骨)に包丁を入れ、半分に切る。塩を揉みこんでおく。

もも肉処理
もも肉処理2
もも肉に塩

❸ にんにくはつぶし、生姜は薄切りにする。長ネギは軽くつぶし、ナツメは切れ込みを入れる。

野菜の処理

❹ 鍋に、❶のもち米と❷の鶏肉、❸の野菜とむき栗を入れ、酒と水を注いで火にかける。

煮込む前

❺ 沸騰したら、弱火にしてアクと脂を除く。少しずらして蓋をし、40分程煮込む。

参鶏湯煮込む
40分煮込む

❻ ネギを取り除き、器に盛る。別皿で塩こしょうを添え、お好みで味を調整しながらいただく。

参鶏湯完成
参鶏湯を器にもる

ポイント

骨付き鶏もも肉がなければ、手羽元や手羽先で代用しても大丈夫です。骨から出汁が出るので、骨付きのお肉を選びましょう。
参鶏湯は、スープ自体は薄味に仕上げ、別添えの塩やこしょうで味を調整しながら食べるのが本場流。キムチやごま油、小口切りのネギなどの薬味を用意して、味を変えながら楽しむのもおすすめです。
韓国ではお料理のあしらいを、コミョンと呼びます。コミョンは、彩り良く仕上げるだけでなく、「あなたのために作りました。まだ誰も他の人は触れていませんよ。」という、食べる人への敬意とおもてなしの心を表すものでもあります。日本料理でいう、天盛りにも通じるものがありますね。

高麗人参は手に入りにくいので使用していませんが、ごぼうで代用することもできます。ごぼうも高麗人参と同様に、気を補い、滋養強壮効果が高いとして、漢方薬にもよく使われている食材です。サポニンが多いという点も、高麗人参に似ている点です。ごぼうを入れる場合は、薄切りにして水にさらしてから加えると、スープが黒くなりにくいですよ。

参鶏湯の食べ方

丸鷄の参鶏湯

本場韓国では、参鶏湯は鍋ごと、丸鶏そのままの状態で提供されることが多いです。
食べ慣れていないと、どうやって食べればよいのか戸惑うことも。
食べ方の一例をご紹介します。

参鶏湯の鶏肉は、柔らかく煮込まれているため、箸やスプーンを使って分けることができます。

① 真ん中から半分に割る。
② もも肉を外す。手羽先、手羽元も外す。
③ お好みの大きさにさばき、取り皿にスープと一緒に鶏肉を取り分ける。
④ 別添えの塩こしょうで味を調えながらいただく。
⑤ 骨はガラ入れ(ツボなど)に入れる。

日本では、味付けは盛り付け前に完成させることが多いですが、韓国料理では、食卓で様々な調味料を組み合わせながら自分好みにするのが特徴です。

参鶏湯には漢方薬にも使われる薬膳食材が含まれていますが、たくさん食べると身体に悪いのではないか?と思われる方もいるかもしれません。
一緒に煮込まれている高麗人参やナツメなどの薬膳食材は、過剰摂取になるほどの量を使用されていませんので、食べてしまって問題ありません。むしろ身体に良いですので、ぜひ食べてみてくださいね。
ナツメには種が入っていますので、注意しましょう。

おわりに

もち米を買ってみたいけれど、お赤飯やおこわ以外のレパートリーが少なくて、余らせてしまう…という方にも、ぜひ試してみていただきたいのが参鶏湯です。
もち米特有の風味とやさしい甘味がスープに溶け込み、夏の疲れた身体を癒す一品になりますよ。

満足感たっぷりなので、ダイエット中の方にもおすすめです。

もちろん、夏だけでなく、秋冬の寒い季節に身体を芯から温めてくれるメニューとして、レパートリーに加えてみてくださいね!

オススメのもち米

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編集者プロフィール

矢田 規子 / 管理栄養士

管理栄養士/フードコーディネーター/フードスタイリスト 大学時代より栄養について学び、管理栄養士国家資格を取得。デパ地下で野菜を中心とした惣菜店を展開する企業を経て、フードコーディネーターのアシスタントを務め、料理撮影やTV・動画のフードコーディネート、料理講師など幅広く経験を積んだ後、独立。 栄養学の知識を活かしたメニュー開発や、料理撮影、スタイリングなどを行う。 二児の母で、離乳食や幼児食の大切さを日々実感中。 食の楽しみを第一に、日々の少しの工夫で健康も目指せることを大切にしている。

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