お米の品種はたくさんあり、どんなお米が自分の好みに合っているのか、迷ってしまうことも多いですよね。あっさりしたキレのよいお米、もっちりと粘りがあるお米…など、お米の個性を見極める指標のひとつに、お米のデンプンにおける「アミロース」「アミロペクチン」の割合があります。
今回のコラムでは、少し難しく聞こえる「低アミロース米」について、詳しくご紹介します♪
目次
低アミロース米とは。アミロースって何?
低アミロース米とは、その名の通り、アミロースの含有率が低いお米です。
有名な品種でいうと、ミルキークイーンなどが低アミロース米に当たります。
アミロースとは、デンプンの一種です。
デンプンは、その構造の違いから2種類に分けられています。
・アミロース…ブドウ糖が、長い鎖上につながっているもの。らせん状の構造をしている。分子同士が絡まりにくいので、粘り気が出にくく、パサパサとした食感になりやすい。
・アミロペクチン…ブドウ糖が、枝分かれしながら複雑につながっているもの。分子が複雑に絡まっていることで、粘り気が出やすい。
デンプンの中のアミロースとアミロペクチンの割合は、植物の種類や、同じ植物でもその品種によって異なります。
低アミロース米は、お米のなかで、アミロースの含有率が低く、アミロペクチンの割合が多い品種のことを指します。
低アミロース米の特徴とメリット
低アミロース米は粘りが強く、もっちりとして、冷めても固くなりにくいといった特徴があります。
低アミロース米のほうが柔らかく、低温で保存しても、他と比べてデンプンの老化が起こりにくいそうです。
デンプンの老化とは、炊き立てのごはんやつきたてのお餅が、時間が経つと硬くなり、ボソボソ・パサパサした食感に変化する現象です。具体的には、βーデンプンが加水・加熱により糊化し、α―デンプンに変化したものが、時間が経つとβーデンプンに戻ることを指します。
低アミロース米は、もっちりと食べやすく、炊き立てはもちろん時間が経ってもおいしくいただけるので、
・お弁当やおにぎり
・まとめ炊き
・パサつきやすい玄米や発芽玄米
などにもおすすめです。
チルド商品(スーパー、百貨店、コンビニなどのお弁当・お惣菜など)に使われるお米としても、活躍しています。時間が経っても、冷えていてもおいしくいただけるのはうれしいですよね。
食べやすい!低アミロースの玄米はこちら
佐渡農場(佐渡重仁)さんの北海道芦別市産
「JAS有機栽培米 ゆめぴりか」
北海道の大自然の恵を受けて健やかに育った「ゆめぴりか」です。農薬や化学肥料に頼らず、有機質の肥料をベースに深く土を耕し、丁寧に土を育みました。甘くもっちりとした味わい深いお米に仕上がりました。
佐藤ファーム(佐藤和久)さんの
山形県米沢市産ミルキークイーン(特別栽培米)
令和5年度 米・食味分析鑑定コンクール金賞受賞!白さ艶がよく、しっとり滑らかに粘り、もちもち感も楽しむことができる。甘さはじんわりと広がり、しつこくないキレの良さがあります。
うるち米、もち米、低アミロース米の違いは?
お米の種類には「うるち米」と「もち米」があります。
私たちが普段ご飯として食べているのはうるち米です。もち米は名前の通り、お餅やおこわや赤飯を作るときに使います。
この2つのお米の違いは、含まれるデンプンの成分の違いによります。先ほども出てきた、アミロースとアミロペクチンの割合が違うのです。
うるち米は一般的には、デンプンの2割がアミロース、8割がアミロペクチンで構成されているのに対して、もち米は100%アミロペクチンで構成されているので、うるち米よりも、もち米の方が粘りが強いのです。
低アミロース米は、アミロースの割合が低く、アミロペクチンの割合が高いので、もっちりとしていて粘りが強いといった特徴があります。
≪デンプン中の割合≫
・普通のうるち米…アミロース17~23%程度、アミロペクチン77~83%程度
・もち米…アミロース0%、アミロペクチン100%
・低アミロース米…アミロース3~17%程度、アミロペクチン83~97%程度
低アミロース米は、“もち米に近いうるち米”といったイメージですね。
冷めても美味しい低アミロース米の品種
低アミロース米の主な品種・銘柄は、
・ミルキークイーン
・ゆめぴりか
・たきたて
・スノーパール
・シルキーパール
・彩(あや)
・夢ごこち
・おぼろづき
・だて正夢
・さとのつき
・金のいぶき
などがあります。
最近話題の「ゆうだい21」も、強いねばりと冷めても硬くなりにくい特徴から、低アミロース米に近いと思われます。米・食味分析鑑定コンクールで数々の受賞歴があり、令和5年のコンクールでも、数々の金賞や特別優秀賞を受賞し、様々な場所で紹介されています。
コシヒカリの5.5倍の粘りがあるといわれ、冷めてから6時間後も炊飯直後と変わらない硬さを保てるそうです!低アミロース米が、おいしいと注目されている理由がよく分かりますね。
今お米業界を賑わす話題の「ゆうだい21」をご存知ですか?の記事はこちら→
参考:宇都宮大学 ゆうだい21 おいしさの証明https://udai21.utsunomiya-u.ac.jp/about.html
低アミロース米はこちら
遠藤五一さんの山形県高畠町産
『ゆうだい21』(特別栽培米)
ダイヤモンド褒賞受賞者の遠藤さんが作るゆうだい21は、甘味と粘りが強く、冷めても美味しく食べらます。また、化学肥料不使用、農薬7割減で栽培しており安心安全のお米です。
こなつ農園(小夏英昭)さんの熊本県熊本市産ぴかまる(有機栽培米)【真空包装】
自然豊かな里山に囲まれた美しい環境で、天然のシリカ成分を多く含む清らかな水を使い丁寧に育てました。ぴかまるはとても粘りが強く、普通のお米ともち米との中間ぐらいの粘りです。おにぎりやお弁当・炊込みご飯などにおすすめです。
低アミロース米の炊き方
低アミロース米は、炊飯時の水を通常よりも5〜15%程度少なめに炊くとよいと言われています。
理由は、もち米を炊いたことのある方ならピンと来るかもしれませんが、アミロペクチンの多いお米は吸水性が高く、柔らかくべたつきやすいためです。
水加減は品種や好みで調整頂く必要があります。いつものお米より、1割くらい少な目の水加減で、と覚えておくとよいですね。
もち米を炊いてみよう!
低アミロース米は、“もち米に近いうるち米”と表現しましたが、実際は全然違う食味が楽しめます。
食べ比べみて、デンプンの含有量による食味の違いを実感するのも楽しそうです。
もち米をせいろで炊くには少し手間がかかりますが、現在は炊飯器にもち米を炊く機能がついているものも多くありますのでお持ちの炊飯器にあわせてお作り頂ければと思います。
もち米には「こがねもち」、「ひよくもち」と言った品種があり、ツナギでも、もち米の取扱いがございます。年末には毎年多くの方にご購入頂いております。炊飯器やもちつき機で手軽にお赤飯やおもちが楽しめますので、家族が揃うお正月やお祝いの席で、もち米を使っておもちやお赤飯を作ってみるのも楽しいですね。
【11月23日はお赤飯の日】文化や栄養価と、一生ものの赤飯レシピの記事はこちら→
おすすめのもち米はこちら
平農園(平一晃)さんの山形県南陽市産山形糯128号(もち米)(特別栽培米)
一年を通し手塩にかけて育て山形のもち米の新品種です。大粒で真っ白、食感はふんわり柔らかく、生もち、のし餅、もちろん赤飯などにも。
低アミロース米のデメリットは?
低アミロースは、日本人好みのもっちり粘り気の強いお米で、おいしさに注目が集まっていますが、デメリットなどはあるのでしょうか?
実は、アミロースが少なく、アミロペクチンが多いことで、いくつかデメリットと取れる特徴もありますので、知っておくと安心です。
①粘り気のある特徴から、向かない料理もある。
分かりやすい例はチャーハンですね。粘り気の多い低アミロース米は、チャーハンにするとベタッとした仕上がりになりやすいため、不向きといえます。
また、好みにもよりますが、カレーライスや丼ぶりなど汁気のある料理にも不向きな傾向にあります。
すし飯にする場合も、べたつきやすいため、注意が必要です。
日本人は、ジャポニカ米を主食としていますので、“もっちりとして粘りが強いごはん”をおいしさの指標にしています。しかし、インディカ米などの粘りの少ないお米が主流の国も多いため、和食以外の料理には、あっさりとしたお米が評価される場合も多いです。
リゾットやパエリア、ガパオライスなどのエスニック料理、インドのスパイスカレーやビリヤニなども、低アミロース米は避けたほうがおいしく仕上がります。
②食後の血糖値が上昇しやすい。
食品が、食後にどの程度の血糖値上昇させるかの指標のひとつに、GI値(=Glycemic Indexグライセミック・インデックスの略)というものがあります。
GI値の高いものは、血糖値が急激に上がりやすく、逆にGI値が低いものは血糖値の上昇は緩やかであるとされています。
お米は、含まれるデンプンにおけるアミロースとアミロペクチンの構成比により、GI値にも違いがあります。
アミロペクチンは、分岐した構造をしているため、消化酵素の影響を受けやすいといった特徴があります。アミロペクチンのほうが消化が早い=ブドウ糖に分解される速度が速い=血糖値も急上昇しやすいため、アミロペクチンの多い低アミロース米は、普通のうるち米に比べると血糖値が上昇しやすいといえるでしょう。
低アミロース米は、おいしさの面で評価されていますが、逆に高アミロース米は、血糖値の急上昇が起こりにくいため健康への視点で注目されています。
ごはんを高アミロース米にすることによる、糖尿病予備軍(境界型糖尿病)の予防や、改善効果も期待されているようです。高アミロース米の銘柄には、ササニシキ、ササシグレ、ゆきひかり、あさひ、あけぼの、夢十色(ゆめといろ)などがあります。
参考:斉藤篤司 健康科学.25,pp.49-53,2003-03-25.九州大学健康科学センター アミロース含有率が糖質食後の血糖応答に及ぼす影響https://catalog.lib.kyushu-u.ac.jp/opac_download_md/748/025_p049.pdf
参考:山崎 雅之,岩本 麻実子,米山 敏美,王 莉,李 麗梅,池西 瑠美,乃木 章子,塩飽 邦憲 第56回日本農村医学会学術総会 高アミロース米によるメタボリックシンドロームおよび2型糖尿病への改善効果
https://www.jstage.jst.go.jp/article/nnigss/56/0/56_0_130/_article/-char/ja/
特徴を知って、おいしいごはんライフを!
今回のコラムでは、低アミロース米の特徴や、他のお米との違いをご紹介しました。
まずは醍醐味である炊き立てごはんで、もっちり感を楽しんで。そして、ご飯が冷めた後の味の違いはぜひ実感していただきたいです。きっとびっくりしていただけるはずです。
低アミロース米はそのまま炊くのも良いですが、いつものお米とブレンドする使い方もできます。
ぜひ、お気に入りの使い方を見つけてみてくださいね!
今おすすめの低アミロース米
青木さんの山形県南陽市産
ミルキークイーン(特別栽培米)
ミルキークイーンはもちもちとした食感で粘りが強く、冷めても美味しいお米です。水加減を通常より1割程度少なくして炊くと、その粘り・弾力・ツヤなどが特に際立ちます。ねっとりとした粘りが濃密で噛むほどに徐々に甘さが増していきます。
農林水産大臣賞受賞 黒澤ファーム(黒澤信彦)さんの
山形県南陽市産夢ごこち(特別栽培米)
数々のコンクールで輝かしい成績をおさめている黒澤ファーム一押しの品種です。しっとりとした質感で幸福感のある濃密な粘りを楽しむことができます。飲み込んだ後はまろやかな旨味が口に残ります。