田中敬二(アグリクロード村岡)
田中敬二(アグリクロード村岡)兵庫県香美町
雲海に浮かぶ棚田で育まれるコシヒカリ
兵庫県の北側、山間の降雪地帯に位置する香美町村岡区。朝、雲海に浮かぶ棚田の姿は、標高400～500mの高さにある中山間地域が魅せる日本の原風景だ。清流「瀞川(とろかわ)」の上流源泉が流れ込む棚田は、田植えの時期には青空が映る水鏡となる。
美しく穏やかな空気が流れる山間部。かつてここで米作りを担う農業関係者には、「米価が安い」「後継者不足」といった疲労感が漂っていた。「アグリクロード村岡」は、この状況を打破すべく地域住民により設立された団体で、ツナギはアグリクロード村岡さんにより、村岡区の生産者田中敬二さんのお米をご紹介していただいた。
田中さんのお米は、米食味分析鑑定コンクールの総合部門で金賞特別優秀賞のほか、水田環境特A部門特別優秀賞を受賞。お米日本一コンテストIN静岡でも特別最高金賞を獲得する等、他数々のコンクールで受賞実績がある。村岡区の静かな棚田風景は、美しいだけでなく、そこで作られるお米の味も高く評価されている。
但馬牛の堆肥と良質な湧き水、自然の恵みがたっぷり
エコファーマーでもある田中さん。良質のえさで育った但馬牛の堆肥と有機肥料を使用し、農薬の使用は慣行の2分の1以下に押さえた減農薬の特別栽培を行っている。水田に流れ込む良質な湧き水と、村岡地域独特の気候「昼夜の温度差」がお米のおいしさを作り出す。
水田環境鑑定士が水田の水質や生き物などを調査し、安全安心でいかに優れた水田であるかを評価した際、田中さんの水田は、「特A-A」に認定された。田中さんの田んぼには、水田環境「特A-A」の看板が建てられている。「この看板のおかげで自己満足する米ではなく他人に認められる米作りをしようと思うようになりました。」と田中さん。鑑定士が驚くほどの、生き物がたくさん住む美しい水田環境で、おいしいこだわりの米作りに真摯に取り組んできた。
その努力が実り、数々のコンクールで受賞し、毎年安定した高食味値を出している田中さんのお米。食べた人が「こんなに輝いているご飯は初めて」「これ以上においしいご飯は食べた事がない」と歓喜するほど、一粒一粒がふっくらと炊き上がる。
静かな棚田風景から、未来への熱い想い
「村岡のお米の受賞で生産者みんなに元気になってもらい、今後も協力して頑張って作っていきたい」…米食味分析鑑定コンクール総合部門金賞を受賞した際、田中さんが語った想いだ。米価格の低迷後継者不足など山間部地域の米作り状況は課題を抱えている。
村岡のお米を支援するアグリクロード村岡さんの活動は、各種イベントで試食、関西の米どころとしての普及活動など多岐にわたる。「売り手よし買い手よし世間よし」の近江商人にならった思想で、村岡の米「とろかわの恋」の販売を通じて地域を盛り上げている。
自然の恵み、先祖代々受け継いだ地域の絆など、たくさんの恩恵の上で成り立つ棚田での米づくり。「米を作ることが集落を守ることにつながると信じている。」と田中さんは語る。村岡区の静かな棚田風景で育まれるお米が放つ美しさ。作り手のこの土地に馳せる優しい想いと共に、食べる人の心にも広がっていく。
